パウエルさん、大量破壊兵器は嘘、悪魔の囁き、コンサル報告では。

コンサルタント

パウエル元国務長官

アメリカのパウエル元国務長官がコロナ感染による合併症で亡くなられました。ワクチン接種はされてましたが、他の治療で免疫系は弱っていたためだそうです。

ブッシュ元大統領は、「祖国と海外から高い尊敬を得てきた。」と功績をたたえています。バイデン大統領も、「戦士と外交官の両方を最も理想の形で体現した。」と哀悼の意を示しました。トランプ前大統領は、亡くなられた人であるのにもかかわらず、けなしているみたいですが。

大量破壊兵器は嘘

パウエルさんが汚点としているのが、「イラクの大量破壊兵器が嘘だった。」ということですが、このことを調べてみました。

この大量破壊兵器はイラク攻撃の根拠となった情報です。

この情報を提供したイラク人科学者シャナビ氏が、「フセイン大統領を失脚させるために嘘をついた。」と認めてます。嘘の情報は、「フセイン政権が生物兵器を積んだトラックを保有している。」というものでした。

この情報を2003年2月に、国連安保理でパウエル国務長官(当時)が報告しました。パウエル国務長官は、「シャナビ氏は兵器製造工場を管理する化学技術者で、生物兵器向け化学物質の製造に直接関与している。」と説明していました。またパウエル長官は、イラク攻撃の理由として、他にもウラン濃縮活動と国際テロ組織アルカイダの存在をあげていました。しかし、大量破壊兵器があることがイラク攻撃の大きな理由だったことは確かでしょう。

シャナビ氏は、1995年にドイツ情報局に「フセイン大統領はトラックで移動が可能な生物兵器を所有しており、兵器工場を建設している。」と嘘を語ってます。その後シャナビ氏は、他国に漏らさないという約束を破ったドイツ情報局を非難してます。

この嘘だった情報はドイツ情報局からアメリカのCIAに伝わるわけですが、CIAはこの件に関する情報をどう捉えていたのでしょう。

CIAが持っていた情報

CIAは2002年末には、フセイン大統領が既に核兵器製造を中止していた事実を把握していました。フセイン大統領は、娘婿がIAEAに大量破壊兵器に関する証言を行った1995年に、大量破壊兵器全ての破棄を指示しています。またイラクの他の科学者から大量破壊兵器はないという情報をCIAは持っていました。

そうすると、アメリカの情報当局には相反する情報が二つあったわけで、パウエル国務長官に、「大量破壊兵器がある。」という情報だけを報告したのかな。

後にパウエル国務長官は、「情報当局は情報源に問題があることを知っていたけど、はっきり言わなかった、」と言ってます。結局、CIA自身の調査で、イラク攻撃の時に、疑惑の全ては根拠がないことががわかります。

情報が怪しい時は、裏付け、ヒアリングで

コンサルでは報告書を作成し関係者に説明してます。説明では根拠資料を材料に説得力を高めるよう工夫するわけですが、説明を誇張しない、盛らないことは注意しなきゃいけないと思っています。

世界的な出来事と自分のコンサルを比べてもどうかと思いますが、「情報が不確かだけど、その情報を使って説明すれば多くの人が納得する。」という状況に出くわすことがあります。

そういう時には、その情報が本当に正しいのか裏付けを取らなければいけません。裏付けがとれないなら、情報源にヒアリングしてみることが必要でしょう。担当者にヒアリングすれば、本当か嘘かは態度を見れば見当が付きますからね。

悪魔のささやきかな

パウエル国務長官もシャナビ氏に直接問いただせば、本当か嘘かはわかったはずです。まぁ、そんなことはとてもできなかったでしょうけど。CIAはドイツからの二次情報ですから、嘘とか本当とか断定できる人はいなかったのでしょう。

国連全体をイラク攻撃に向けさせるための情報だから、パウエル国務長官は、「正しい情報だと思いたい。」という悪魔のささやきがあったのかもしれません。

コンサルの場合、後でその情報が嘘だったとなると信頼関係が崩れるので、悪魔のささやきにはのらないように、自戒してます。これからも気を付けたいところです。

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